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- 渡辺 園子
医薬品開発を守る防波堤。コツコツと正しさを紡ぎあげる人。
自分の良心にまっすぐな日々。
薬事監査とともに歩んできた渡辺。自身はどこにやりがいを感じているのだろうか。「大袈裟ですが、自分が仕事をすることで、間違った薬が世の中に出ないという誇り、そんなやりがいがありますね」。また、渡辺はこうも語る。「この仕事は、自分の良心にウソをつく必要のない仕事だと思います。かつては、製薬企業の人間が医療機関のカルテを確認することは、法規制上認められていなかったため、『このデータは本当に存在するの?』という疑問を感じることもありました。また、日付を遡って作成された書類を目にすることもありました。でも、そんなことをせざるを得なかった当人もきっと苦しいと思うんです。この仕事にはそれはない。仕事と私自身が大切にするものと、常に合致していると思います」。
頼もしき、生き字引。
じっくりと着実に、正しさを積み上げてきた渡辺。「周囲からはまじめだとか、記憶力がすごいとか言われますね。しかも20年この仕事をしているから、『あのときはどうだった?』、『あの資料はどこにあります?』と必ず聞かれます。生き字引っていう称号さえあるほど(笑)。まさに、薬事監査の変動期を生きてきたのかもしれません」。そんな渡辺だからこそ、プライベートも含めたスケジュール管理も重視している。「マジメな反面、ムリはしません。仕事は時間内で終わらせて、遅くても19時半には社を出ます。そして、仕事帰りにはジムに行き体調管理もしていますね」。そんな渡辺は今日も、医薬品の開発を見守り続ける。
信頼関係をつくる。
「監査の仕事は相手との信頼関係がいちばん大切」と渡辺は語る。「この仕事は、人がやったことをチェックする仕事。相手との信頼関係がなければ、真実を隠されてしまうことだってある。医療機関でも社内の人間でもそれは同じ。監査の仕事が始まった当初は、見方によっては『痛いところを探しにくる部署』と見られたりもしていました。でも最近は、必要性を感じていただいたことで、チェックされる側の意識も変わり『一緒に良くしていこう』というスタンスに変わってきましたね。ネガティブな情報でも、それを把握して対策を立てることが大切だと。だからこそオープンに事実を語ってくれるようになりました。私の毎日は小さなことの積み重ねですが、それが着実に製薬会社を良くすることにつながる。だから、前向きに取り組めます」。
薬の命を守る仕事。
「薬事監査という仕事の意義は、単に正確性や真実を担保するだけではない」と渡辺は言う。「監査を通じて、医薬品の安全性を守るのは、薬の生命を守る仕事でもあるんです。薬の副作用については、発売後多くの人に使ってもらわないと分からない。副作用がどんな頻度で出現し、どんな患者さんに起きるのか。その情報をしっかり管理せずに大きな副作用が出てしまえば、医薬品そのものの承認が取り消されてしまう事態にもなりかねません。それは、その薬を必要とする患者さんにとっては大きな不利益なんです。そのために世界中で安全情報を共有することが大切。とくに中外製薬は、グローバル企業の一端を担っているからこそ、その意識は強いと思います」。
真実と向き合う仕事。
研究職として入社し、医薬品の毒性研究に従事していた渡辺。「生殖毒性といって開発候補品を妊娠中、授乳中の母体に投与した際、どのような影響が出るのかを5年ほど研究していました。その後、現在の薬事監査部に異動。かれこれもう20年、この仕事をしています」。渡辺は薬事監査の草分け的存在でもあるのだ。「薬事監査という組織ができたのは、私が入社した1984年。薬が適正に開発されているかをチェックする部門として誕生しました。以来20数年、製薬業界は医薬品開発から得られるデータの信頼性に対しての意識はかなり高くなったと感じます。実際に私自身も、薬事監査として臨床開発の方と接する日々を過ごし、この仕事への認知も高まってきたと実感します」。
その開発は、適正か?
臨床開発の仕事内容を監査し、適正な開発が行われているかをチェックする渡辺の日々。「私の仕事は、開発担当者が、決められたルールや手続きに則った臨床試験(治験)を行っているかをチェックすること。まず社内で情報収集し、実際にドクターや看護師さん、薬剤師さんにお話をうかがい、医療機関にある資料と社内の資料に矛盾点がないかを確認するのです。たとえば、原資料と呼ばれる患者さんのカルテを確認し、最初に記録されたものと、社内で収集された症例報告書が合致しているか検証したりします。薬事監査とは、たくさんの資料や情報を付き合わせていくという、とても緻密で細かな仕事の積み重ねですね」。



